WoW等覚え書き

World of Warcraftに関するメモなど

小説 ”World of Warcraft: War Crimes” 感想

今月(2014年5月6日)発売された、WoW小説最新作(パンダリア編全三部作の完結編)を読んだので、内容とあらすじをメモしておきます。

パンダリア編

第一作目『ジャイナ・プラウドモア―戦争の潮流』

(Christie Golden, "Jaina Proudmoore: Tides of War", 2012)

第二作目『ヴォル・ジン ―ホルデの影』

(Michael A. Stackpole, "Vol'jin: Shadows of the Horde", 2013)

 

に続く、第三作目。

戦争犯罪』、クリスティー・ゴールデン著

(Christie Golden,  World of Warcraft: War Crimes, 2014)

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 ガロッシュ・ヘルスクリームに対する裁判の一部始終とその後の展開が描かれる。

 

ネタバレ込みで小説のストーリーをごく簡単にまとめてみると、

 

検察側・弁護側がそれぞれ証人を召喚して裁判が進められる中で、ガロッシュの犯した戦争犯罪が次々と明らかにされる(この辺は、前作・前々作ですでに描かれた場面との重複が多い。総集編的な感じ)。

ガロッシュの死刑はもはや避けられないであろうと多くの人が考える一方で、「それでも、人は変われるんだ。だからガロッシュだって変われる。生きて罪を償うべきだ」(要旨)と弁護を試みる人たちもいたが、ガロッシュ本人は、最後まで反省の色を示さず、それどころか人々を挑発して、赦しを踏みにじる。

実力でガロッシュの毒殺を試みる人々の計画も失敗し、ついにすべての審理が終わる。

そして、判決が下される直前になり、ガロッシュの奪還を企む彼のシンパたちが裁判場を強襲し、結局、ガロッシュはまんまと逃亡に成功する。

主犯は3人。

Dragonmaw clanの女リーダーであるZaelaと、黒幕のWrathion(プレーヤーにはおなじみの黒ドラゴンの少年、Deathwingの息子)。そして、予想外の裏切り者なのが、裁判の進行に重要な役割を果たしていたBronze DragonflightのKairozdormu(通称Kairoz。Vision of Timeという、今回重要な役割を果たす技術(道具)の開発者でもある。詳しくは後述するけど、裁判での証拠調べを可能にした画期的技術であると同時に、(その悪用によって)ガロッシュ奪還の計画を成功させた技術でもある)。

 

結局ガロッシュ対して正義の裁きを下すことができず、今までの裁判は一体なんだったのか… と思わずにはいられないものの、この裁判を通じて人々は多くのことを考え、学んだ。決して無駄な徒労ではなかったというのがその場に居合わせた人々の思い。(裁判官であるCelestialはガロッシュ対して死刑は宣告せず、生きて罪を償わせる判決を下すつもりだったことも明らかになる)

 

この作品を通じて最も印象深いメッセージと言えば、

“Remember the sha! Remember the sha!”
シャーを思い出せ!シャーを忘れるな!

というXuen(白虎)の呼びかけに応えるかのような、Baineによる次の台詞。それはWoWパンダリア編のストーリーに底流するひとつの主題でもある。

“We all carry within us the potential to become our own versions of Garrosh Hellscream.”
我々は皆、自分版ガロッシュ・ヘルスクリームになる可能性を自らの内に秘めているのだ。

もっとも、ガロッシュは単なるサイコパスであって我々とは違うと反論する人もいるかもしれない。しかし、ガロッシュ体制を拍手喝采で支持したオーグリマーの民衆や軍隊(不服従を貫いた者ももちろんいたが)がいなければ、ガロッシュ単独でここまでの戦争犯罪を起こすことは不可能だったとも言えるわけで、誰だって皆、おぞましい戦争犯罪に加担する可能性を秘めているのだ。だからこそ、「シャーを忘れるな」というCelestialたちの呼びかけの宛先は、まぎれもなくこの自分なのだということ。決して他人ごとではない。

パンダリア編で登場した、七つのシャー。疑念(Doubt)、恐怖(Fear)、怒り(Anger)、絶望(Despair)、暴力(Violence)、憎しみ(Hatred)、そして自尊心(Pride)。

これらの情念に対して自分を明け渡してしまった時には、それこそもう一人のガロッシュ・ヘルスクリームが生まれる可能性だってあるのだ、ということ。

 

 

ちょうど先週末に偶然、ジョシュア・オッペンハイマー監督の『アクト・オブ・キリング』を観たところだったので、この小説と妙に共鳴してしまって、「自分も立場が違えば、あの人達と同じ罪を犯していたかもしれない」と自然と思えた。あの映画で描かれたインドネシアの人々の犯した罪が他人ごとだとはとても思えなかったし、世界中のどこで起こってもおかしくない事件だと思った。

 

というわけで、ベタと言えばベタなメッセージかもしれませんが、野蛮へと退行する徴候が幾らでも見いだせるこの時世にあって、意外とアクチュアルなメッセージだと自分は思っています。自分がWoWはじめBlizzardの作品を愛するのは、彼らBlizzardのこういった真摯な姿勢とメッセージに共感するから。

パンダリア編のエピローグにふさわしい小説でした。

 


 

細部のあらすじ 

 

被告人 Garrosh

裁判官 Celestialの四神

検察 Tyrande

弁護人 Baine

証人として以下の人物たちが順番に召喚される。 

  • Velen  
  • Kor'jus(オーグリマーのキノコ商人。Garrosh体制に対して非協力的だったので、Kor'kronたちによる半殺しリンチにあう)
  • Varok Saurfang(Arthasに精神を乗っ取られて非業の死を遂げたDranoshの父親)
  • Anduin (今回、彼が物語のキーパーソンとなる。ガロッシュはなぜかAnduinとの面会だけに応じ、何度も二人で会話が交わされる。また、AnduinはWrathionとも仲が良い。)
  • Vol'jin 
  • Go'el(Thrallと呼びたくなるけど、現在はもうThrallとは誰も呼ばない。息子のDurakも登場)
  • Alexstrasza (Deathwingとの戦いによって、今ではもうAspectとしての能力を失っている)
  • Gakkorg (元Kor'kron(=Hordeのwarchiefの親衛隊))
  • Longwalker Perith Stormhoof (Baineが信頼するtauren仲間。Baineの命令で、GarroshがTheramoreに侵攻することをJainaに知らせるための使者の任務をつとめた)
  • Jaina (Rhonin亡き後、今はKirin Torのリーダーをつとめる。最近は、青dragonのKalecgosと惹かれ合っている恋仲)
  • Varian 

 

続きはまた改めて書きます。とりあえず初のテスト投稿。